赤と青のえんぴつ

分野にこだわらず、気になったことについて机上の空論を繰り広げたい。

アニメ『はたらく細胞』を掘り下げよう【第1話】

※シリーズ化したいけど絶対頓挫します

※まちがってたらすいません、指摘していただけると助かります

 はたらく細胞がアニメ化しましたね。声優には明るくない自分でも知っている声優が多いので豪華なんだと思います。かなり話題になっているみたいですね。

 さて、この作品の題材は「人体」そのものです。この作品をより楽しむために、作品を生物学視点で掘り下げたらいいんじゃないかと思ってこの記事を書いています。ぜひ、もっと詳しい方の解説とかも聞いてみたいです。誰か書いてください。

 では、アニメの流れに沿って補足の形で記述していきたいと思います。

 赤血球、血液循環によって酸素と二酸化炭素を運搬する」

 赤血球は酸素を運ぶということは理科とかでならったと思います。これは赤血球中のヘモグロビンが酸素の多いところでは酸素と結合し、少ないところでは酸素を離すという性質からなっています。酸素との結合しやすさ、酸素結合特性がシグモイド型になることは高校生物で習ったと思います。合理的ですね。

 でも、赤血球って運搬するのは酸素だけでは?と思いがちですが、ちょっとだけですが二酸化炭素も結合します。もっとも、メインの運搬経路は、炭酸イオンとして血液の液体成分、血漿に溶けて運ばれるものです。

 「こちら白血球好中球課」

 白血球と一言に言ってもさまざまな種類の白血球がいます。好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などなど。おそらくこれからそれぞれアニメで取り上げられると思うのでここでは割愛します。

 さて、好中球は自然免疫、という身体を守る第一防衛ラインの構成員の一つです。普段は血管内を移動していて、血管外でマクロファージという細胞が外敵を認識すると「やばいやつきた!」という信号、炎症性サイトカインを出します。すると好中球はそれを認識して血管外へと出ていき外敵をやっつけます。

 ちなみに好中球の倒し方はあんなかっこいいものではなく、外敵を食べて(貪食)、その中で活性酸素酵素を用いて殺すというものです。たくさん動員されても好中球は菌を飲み込んで死んでしまいます。その死骸が蓄積すると化膿します、いわゆる「うみ」というものの元です。

 赤血球のジャケット」

 赤血球のヘモグロビンは酸素と結合している時赤くなります。さっき赤血球は酸素を運搬し終わったので、ジャケットの色が黒みがかっています。芸が細かい。

 あんたそこは一方通行だよ」

 心臓から勢いよく飛び出した血液も全身を巡っているうちに勢いはほぼなくなってしまいます。足からまた肺、心臓へと登る間に逆流したら大変です、そのため、静脈には一方通行の弁がついていて、逆流を防ぎます。

 また、もう一つ血液を心臓へと戻す機構として筋肉のポンプ作用があります。脚を動かすと筋肉が動いてそれによって血管を外から押し出すのです。エコノミー症候群というのは長期間フライト中に座っているために、脚の筋肉が動かず、血管を押し出せないから血流が悪くなるんですね。

 「あら?ここは脾臓ですけど?」

 脾臓の働きは2つあり、一つは免疫応答、血管内の異物をマクロファージが認識してそれに対抗してリンパ球を増やすことと、もう一つが古くなった赤血球をマクロファージが破壊することです。脾臓は身体のろ過装置のようなものです。

 脾臓内では血管は途切れていて開放されています。そこでマクロファージの「ろ過」をされたのちに静脈へと入り循環していきます。

 「ここはリンパ管だ!赤血球が入るなアホ!」

 リンパ管は血管とは別の循環経路です。血管と違ってゆるゆるな壁を持っているので、物質の交換が盛んに行われています。血管外に存在している組織液を吸収して、静脈角で静脈と合流します。この経路によって血液の量や組成を一定に保つ役割を持ちます。また消化管では脂肪の吸収を担っています。

 アニメではリンパ管に赤血球が入ってきたことに怒っていましたが、出血などで血管外に赤血球が出てきた場合はリンパ管を通って血管に戻ることもあります。

 「腎臓での第七倉庫の『廃』の表記」

 腎臓が廃棄物を出す臓器だから。

 「莢膜か!」

 莢膜は親水性の多糖体(もしくはアミノ酸)からなるゲル状の表層の付着物で、好中球やマクロファージから気づかれにくくしたり、補体という免疫を助ける物質を退けたりして貪食から逃れやすくすることができます。これを持っている菌は高病原性、つまり凶悪な菌です。

 「肺炎球菌」

 肺炎球菌は凶悪な菌で成人の市中肺炎(一般的な肺炎)では最多の原因であり、高齢者ではよく死因となりえます。

  ちなみに、菌が血管内に入るのは菌血症といい、髄膜炎に進展するという話はアニメでありましたね。そもそも血管や髄液は無菌環境なので、菌が入り込むというのはかなりの異常事態です。

 「こっちも人手不足だ!」

 菌血症になると、白血球の総数がめっちゃ増えるかめっちゃ減るかします。対抗するために数は増やしても力尽きちゃうと減っちゃうんですね。

 「レセプターが反応している!」

 マクロファージなどにはTLR(Toll-like receptor)と呼ばれるレセプターがあります。これは細菌やウイルスといった外敵が持っている物質をざっくりと認識するレーダーみたいなものです。おそらく好中球も持っていると考えられます。

 好中球やマクロファージは外敵を手当たり次第にやっつけようとするので、敵とわかれば十分なので、ざっくりとした認識になっています。ちゃんとした認識をするレセプターは後述。

 「樹状細胞」

 樹状細胞はアニメでの説明の通り、「こいつ怪しいですよ!」という情報を他の免疫細胞に伝える。これは身体を守る第二防衛ラインの橋渡し役となります。手当たり次第にはねのける第一防衛ラインと違い、第二防衛ラインでは狙い撃ちをします。細胞なので、通り道ではない。

 「血小板」

 多分次回で説明されると思う。損傷などで内皮細胞が損傷すると血液凝固系が働く、そのメインを担うのが血小板である。血液凝固系はいくつもの反応を経てフィブリンという線維性の物質を作り血餅という塊を形成する。 

 アニメの最中、血小板たちが運んでいたのはカルシウムイオン。これは血液凝固系の反応で必要なものである。

 血液凝固系は出血を止めるという働きでは良い点ではあるが、これが異常に作用すると血栓となり、脳梗塞などを起こしうる。

 「ヘルパーT細胞・キラーT細胞」

 免疫の第二防衛ラインの構成員。樹状細胞はヘルパーT細胞やキラーT細胞というリンパ球に「こいつ怪しいですよ」と抗原提示(情報提供)をする。ヘルパーT細胞はまさに司令官的な働きをし、キラーT細胞やB細胞、マクロファージに働きかけ免疫を活性化する。キラーT細胞は異物の「細胞」を攻撃する。

 第一防衛ラインと違うのは、特定のターゲットがあることである。第二防衛ラインを担うリンパ球(T細胞、B細胞)はそれぞれの細胞がある特定の抗原(タンパク質)を認識するレセプターを持っていて、樹状細胞からの提示された抗原に対するレセプターを持つリンパ球が活性化し、増殖する。いわば、ターゲットを殺す精鋭部隊である。

 キラーT細胞は細胞膜に穴を開けたり、アポトーシス(自殺)を誘導する物質を投げつけたりすることで異物の細胞に攻撃する。キラーT細胞は、がん細胞やウイルス感染細胞といった異常な細胞を殺すためのものであり、今回の肺炎球菌は細胞外に存在するので、キラーT細胞の出番はない気がする。

 

 「毛細血管がいっぱい…!?」

 肺ではご存知の通り酸素と二酸化炭素の交換を行う。できるだけ血管が吸った空気と多く接触したほうが効率的であるため、たくさん枝分かれして血管の表面積を増やしている。

 「毛細血管は狭いので一人ずつ入ってください」

 毛細血管の直径は小さいもので5μm、赤血球の直径は7μmである。自分より小さい管をどうやって通っているのか。赤血球のあのへこんだ形に秘密がある。赤血球は細胞が持つ核を失っている。すると、赤血球は自由に伸び縮みしやすくなるため、狭いところも変形して通れるのだ。

 「遊走」

 前述の通り、好中球は血管内外を行き来することができる。これはマクロファージが出した炎症性サイトカインが血管内皮細胞に好中球とくっつくレセプターを発現させることで血中で好中球と結合し、好中球を血管外で移動させる反応を進められるためである。

 「くしゃみ」

 せきや下痢など、異物を外に出そうとする機構が体内には備わっています。安易に薬でそれを止めると体内に菌を残すことになる可能性もあるのでよくないです。

 「エンディングのクラリス

 メジャーな抗菌薬にクラリスロマイシンがあるからオファーしたと思われる。レジオネラやクラミジアに適応。