完全にミーハーですが、今年の本屋大賞を受賞した、『成瀬は天下を取りにいく』を買いました。そもそも本を買うことも少ないので、これでも一歩踏み出した行為ではあります。すでに大勢が買っているのだろうけど、ネタバレしない範囲で感想をつらつら書こうと思います。
物語の軸となるのが、成瀬という滋賀県大津市に住む女子中学生です。
成瀬は、小さいときから優秀で周りから浮いているけど、それも気にすることもなく振る舞っていて、その一方で、二百歳まで生きると宣言してみたり、突然シャボン玉を極めてテレビに出たりと変わり者でもあります。
成瀬の幼馴染である島崎は、突拍子のない成瀬の言動に付き合ったり付き合わなかったりしていました。そんなある日、大津市唯一のデパート、西武大津店が閉店するというニュースが流れます。
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
成瀬が島崎に宣言するところから物語が始まります。
この物語は、コロナ禍の時期の話で、学校のイベントの中止や、公共の場でのマスク着用やソーシャルディスタンスの義務が当たり前のように書かれています。今まさにコロナ禍を経験したばかりの自分にとっては、すんなりと飲み込める描写ですが、これがしばらくして読まれたときには、もしかしたら引っかかるのでしょうか。
マジで余談ですが、このコントを思い出しました。
【コント】さらば青春の光「すご六」 / 単独公演『すご六』より - YouTube
これはコロナ全盛期の異常性をイジったコントなのですが、小説のこうした描写も将来は現実味のない描写になるのかもしれません。
この物語は、実際にコロナ禍の夏に閉店した西武大津店をはじめ、実在のイベントや人物が出てくる、現実味のある話です。登場人物の起こす行動も、変わり者の成瀬であっても、極端に現実離れした行動を起こすわけではありません。
でも、この物語は、コロナ禍の色んな制限があり窮屈な思いをしている中で、登場人物たちの一歩踏み出した行動が、劇的ではないけど、他の人の何かを変えた様を描いています。
すごくドラマチックではないけど、10年後くらいにふと「あの時の自分たち、バカやってたよね」って振り返りたくなるような、そんな出来事を描いています。成瀬と同世代の人と、成人以降ではきっと受け取り方も違うでしょう。
面白かったです。続編が出てるみたいなので買います。